アニマルスピリット
日経新聞のコラム「やさしい経済学」より
経済学は、限られた資源を効率的に配分し、同時に公正に
配分する仕組みを考えるための学問です。
このうち効率性は、希望と相反するような関係にあります。
人は、損になることをしたくなく、得になることをしたいものです。
損得を判断するには情報が必要です。
しかし、情報はいつでも十分にあるわけではありません。
特に未来については分からないことだらけ。
何が損で、何が得かも本当はよくわからないものです。
だからこそ、一生懸命に何かをやってもうまくいかず、
努力が無駄になることもあります。
無駄になることを過度に恐れる人は、何かに挑戦する気も
弱くなりがちです。
反対に、様々な苦労を経験した年配の人には、こうつぶやく人もいます。
「人生いろいろなことがあった、失敗もたくさんした。
でも振り返ると、人生に無駄なことはなかった。」
こういう考えの人は、何歳になっても若々しく、希望を持って何かに
取り組んでいます。
先の見えない中で希望を持ち続けるには、損得を超えた情熱が必要です。
経済学者 ケインズが述べた「アニマルスピリット」に通じるところがあります。
アニマルスピリットは、行動に駆り立てる本能的な衝動のことで「野心」と
訳されることもあります。
野心こそ、投資を左右する長期的期待の核心であると、ケインズは考えました。
現在は、常に効率が重視され、無駄をなくすことが強調されます。
一方で、経済が長期的に成長するには効率を超えた野心や希望も必要です。